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この秋、注目の作品といえば、「オカンの嫁入り」。現在、映画が公開中で16日には、東京で舞台版が初日を迎える。映画と舞台が一緒に公開されるのは極めて珍しい。舞台で捨て男を演じる、佐藤アツヒロ(37)は、厳しい残暑のこの日、うれしそうに空を見上げていた。

 9月を迎えても全国的な猛暑が続いている。「今日も暑いですね」-。そう挨拶すると、満面の笑みをつくった。

 「夏から、雲が大きいと思いませんか。写真をずいぶん撮りました。だって、小学生の夏休みに見た雲と同じ。懐かしくって、空ばかり見上げてしまうんです」

 光GENJIで、トップアイドルになったのが10代の時。当時から、あまりに忙しく、空を見上げることなど忘れていた。

 「鏡というか、自分が映るものがイヤだな、と思う時がずいぶんありました。だって、俺は知らないのに、まわりの人は俺を誰か、知っている。ちゃんとしなければ、そう思うと、いつもヘアスタイルが乱れてないか、服はちゃんとしているか、外出するたびに気になって仕方がない。ショーウインドウに映る自分をみて、自分はなんだろうなぁ、と確認していた。このままでは、本当に自分がなくなる、と心が悲鳴をあげていた時もありましたね」

 そんな葛藤と戦いながら、いつしか30代を迎える。舞台俳優として、足元を固めると、今度は逆の立場となる。

 「電車に乗ったりするのが楽しい。何気なしに、乗り合わせた人を見たりするのは、本当におもしろい。変な意味ではなく、いろいろな人がいるんだな、と思いました。そんな気持ちになれたのも舞台のおかげ。公演中は、いつもチャレンジしている感覚で、毎日、期末テストがあるような気持ちですね。おかげでコミュニケーションをとるのがうまくなりました」

 そうはいっても、連日、演技を行う舞台はストレスも多い。

 「体が疲れていないのに、頭だけが疲れることがある。最近、ちょっと、行こうか、とジムのプールで泳いでいます。ただし、泳ぎは自己流。フォームの美しさは二の次ということで…。子供の頃、父から溺れない泳ぎを仕込まれました。コツ? とにかく前へ進め。そうすれば、溺れないでしょう。逆三角形の水泳体形になれたら、うれしいけど」

 体を鍛えていると、見えないことが、見えてくる。元気のヒミツは不惑を迎える準備をスタートさせたことだ。

 「30代までは勢いでやれそうだけど、40代で活躍している俳優さんは、容姿ではなく、味がある。本当に素敵な人が多い。若い時から応援してくれるファンを残念、という気持ちにしたくないですからね。そのために、内面を磨く努力をしています。料理をしたり、本を読んだり、映画をみたり…。そういうことを積み重ねていくことが大事だと思う。ファッションで勝負をしたくない。すてきな40代を目指して奮闘中です」

 大人の顔と少年の心を忘れないXデーまで、あと3年。(ペン・青山道灌 カメラ・渡守麻衣)

■さとう・あつひろ 1973年8月30日、京都・八幡市生まれ。87年に光GENJIでデビューし、95年の解散後はソロへ転向。2000年「ララバイまたは百年の子守唄」で舞台デビューを果たし、現在まで多くの話題作に出演。「さくら色 オカンの嫁入り」(26日まで、東京・紀伊國屋サザンシアター)では、謎の多い研二を演じる。
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